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【フリー小説】さつき波の都 #7 廃校探索ノ章3

さつき波の都

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職員室には食料こそなかったものの、大きな手がかりを得ることができた。

自分たち以外にも生きている人がいる。

それだけで希望が満ちた。それも先生となれば、頼もしいことだろう。

しかし、それと同時に不安も満ちた。

机にこびりついた血、誰かが争ったような形跡、緊急事態の最中よほどのことがないとこうはならない。

そして、その不安は校長室に入った瞬間、膨張した。

校長室は職員室に直接つながっており、廊下から見て左奥にその扉があった。職員室にそれ以外めぼしいものがなかったので、ついでに覗くことになったのだ。

……!

オサムはドアを引いた瞬間、驚きでかたまった。イブキがその背中にぶつかる。

「痛……! どうしたの?」

彼の顔は青ざめている。

「刀が、ない」

「刀?」

「飾られた刀が一本なくなっている。もとからかもしれないけど……」

イブキは彼の背中から校長室を覗き込んだ。ちょうど向かいに刀が二本横に掛けられるような台があった。確かに上の一本がなくなっている。

「模造刀だね」

「うん。でも、これを振り回せば十分大ケガになるよ」

「マサヤン、大丈夫かなあ」

するりとオサムの横をすり抜け、模造刀の近くに寄る。ほこりの有無を確認し、こちらに向かってうなずいた。やはり、最近持っていかれたようだ。

ここまでをまとめると、職員室には少なくとも二人いたことは確実だった。一人は井上先生だろう。そしてもう一人、彼と争った人物  。模造刀を持って、井上先生を襲った人物がいる。

そいつがこの世界の黒幕? いや、そう断言するには時期尚早だ。

「うわ! 意外と重いね!」

顔を上げると、イブキが残った一本を持ち上げていた。持っていかれたのは大きい方で、残ったのは小さい方だったが、それでも包丁と比べれば断然重いだろう。

彼女がこちらをみる。

「どうする? 持ってく?」

「……そうだね。僕が持つよ」

オサムは刀を手に持った。ずしりと腕に重さがのしかかる。

まだ校内にそいつが潜んでいるかもしれない。もし、襲われでもしたら……。こいつでなんとかするしかない。大きな太刀に対抗できるかわからないが、ないよりかはましだ。

一通り、校長室を見て回る。やはりめぼしいものは特になかった。

「次は校舎を見て回ろう。さっきは二手に分かれると言ったけど、武器を持っているやつがいるなら話は別だ。一緒に行こう」

「おっけー」

よし、と言って校長室から出ようと足を運ぼうとした。

「あ、ちょっと待って」

「何かあったのか?」

重大な手がかりを見落としていては困る。

「いやあ」

そう言って彼女は、奥のシックでほこりまみれになった校長椅子に腰掛けた。

そして、机に肘をついて目の前で手を組む。しばらくの沈黙。風が背後から通り抜ける。

イブキはまゆをひそめて渋声で言った。

「これ、ずっとやりたかったんだよね……」

……男友達ならどついているところだ。

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