職員室は、ゴミ置き場のように見えた。
錆びた机。椅子には土ぼこりが溜まっている。立てかけられた紙の書類は黄ばみ、端からもろく崩れそうだ。
「マサヤンの机は 」
イブキが奥に向かう。一番右奥の六席で固められたグループ、その窓際の真ん中で立ち止まった。
「あれー?」
イブキは首を傾げた。
オサムがしぶしぶ後につく。職員室で得るものは何もなさそうだった。
「おかしいねえ。これにその証拠写真がある話なんだけど……」
机には木製のフレームだけが置いてあった。
オサムのまゆがピクリと動く。
写真がフレームに……無い? それにこのあたり、何か違和感がある。
イブキはよく確認しようと、それに手を伸ばした。そうか!
「ちょっと待った」
「え?」
オサムが手で制した。イブキはきょとんとして、こちらを見ている。
「ここ、よく見てみて」
フレームの足を指さした。ほこりが溜まっていない箇所がある。それは、フレームの接地面に酷似していた。つまり
「一度、動かされた形跡がある。それも、ここ最近の話だ」
イブキの目が見開く。
「じゃあ……」
「うん。井上先生がここに来た可能性が高い」
「おおっ! マサヤンが生きてるんだね!」
大きな瞳がぱあっと輝く。
幸運だった。これがもし、朝の明るい時間でなかったら、机が窓際でなかったら、おそらく気づかなかっただろう。
しかし。オサムは不安そうに言った。
「ただ……」
「ただ?」
机の端を指さす。赤黒いものが微かにこびりついていた。
「血……」
「それに、この辺りの椅子が不自然に倒れている。長年放置されたって感じじゃない」
「それって……」
オサムはイブキの目を見つめた。しばらくの沈黙。そして静かに口を開く。
「もう一人いたってことだよ。井上先生と争った相手がね」