感動したい

【フリー小説】かぼちゃリゾート

かぼちゃリゾート

Uは制服をハンガーにかけると、それを眺めた。

紺色が基調で、白いリボンがワンポイントのオシャレなセーラー服だった。彼女はこの制服が気に入り、ここに入学したのだった。

しかし、それもだんだんと「飽き」がくるというものだ。

Uはもはやこの服に対して、入学当初のワクワクは感じられなかった。むしろ、なぜ私服ではダメなのか、校長に問いただしたい気分だ。

彼女は今日、久しぶりに小学校の友達と連絡をとっていた。小学生はみな、違った私服で個性があふれていたものだ。

しかし高校生となった今。みな同じ制服に身を包んでいる。高等学校という機関はオシャレという個性を排除したのだ。

「毎日オシャレを考えるのが一番に決まっているのに。はあ、もう寝よ」

何か心にいたたまれないものを感じ、Uは眠りについた。

その夜。彼女は夢を見た。季節外れのハロウィンの夢。

Uは小さな女の子だった。小さい頃よく着ていたワンピースに身を包み、かぼちゃの馬車から、オレンジとパープルでできた世界を眺めていた。

見上げるほど立派なお城の前に着くと、Uは馬車をゆっくり降りた。

すると、どこからともなく、おばけたちがやってきて彼女をにぎやかに出迎えてくれた。魔女、吸血鬼、フランケンシュタインにミイラ。みんな、みんな、Uの到着を喜んで祝った。

そして彼らに連れられてお城に入ると、そこには大きな、大きな、おばけかぼちゃがいた。どうやら、この世界の生みの親らしい。この世界の守りごとについて説明し始めた。

「たった一つの守りごと。大事な、大事な、守りごと。それは、毎日服を変えること。妖精に頼んで、変えること」

Uはホッとした。彼女にとって、それは規則ではなかった。むしろ、誰かに言われなくてもそうするつもりだった。

それからというものの、Uは毎日かぼちゃリゾートを楽しんだ。お菓子の山に行って、おばけたちとおしゃべりして、かぼちゃスープの湖を見て、そして、自分で考えた素敵な洋服に身を包んだりして。

しかし、それもだんだんと「疲れ」がくるというものだ。

毎日目まぐるしく変わるかぼちゃリゾートは、次第に彼女を混乱させた。さらに、毎日違った服装を考えることに苦痛を覚えはじめた。

そしてついに、ファッションアイデアが底をつき、守りごとを破ってしまった。Uはその日、初日のワンピースを着ていた。

「初めた来た時のことなんて、みんな忘れているに決まっているわ」

そう思って彼女は、魔女のなべを見に行った。魔女は服を見るなり言った。

「おや、なんだい。その見たことがある服は。つまらないやつになったね。帰った帰った」

彼女は家から追い出された。次に、吸血鬼のトマトジュースを飲みに行った。

「や、近寄るな。不潔な格好が移るだろう。帰った帰った」

彼女は館から追い出された。次に、フランケンシュタインの研究を見に行った。

「おい。考えることをやめてしまったのかね。研究しがいのないやつだ。帰った帰った」

彼女は研究所から追い出された。次に、ミイラのもとへ向かった。

「……ふがふが」

何を言っているのか分からなかったが、どうやら、そういうことらしい。彼女は遺跡から追い出された。

そうして、かぼちゃリゾートの住人はみな、Uを追い出そうとした。彼女は謝ったが、誰も聞いてくれない。

住人たちにかつがれると、Uはそのままかぼちゃリゾートの深い、深い、ゴミ箱に捨てられた。そのふちに立つ住人たちの顔がだんだんと遠くなっていく。

Uは落ちていく最中、思った。

「ごめんなさい。もう、毎日オシャレを考えるのが一番だとは言わないわ」

その瞬間、目が覚めた。気付けば夜があけている。目をこすり、ハンガーラックを見ると、そこにはいつもの制服がかかっている。

Uはそれを見ると、なんだか笑えてきた。そして、ひとつ大きな伸びをして言った。

「さて、今日もいつもの制服に着替えますか」

ABOUT ME
ぱっちー
ども、チャチャタメの管理人でございます。