感動したい

【フリー小説】第一の能天使《ファースト・エクスシア》

ファーストエクスシア

暗黒結社と対立する最強の存在、人類に救いの手を差し伸べるヒーロー、表に顔を見せない道化師、そして、選ばれし者だけが見える謎。それが、第一の能天使《ファースト・エクスシア》。

「やっぱり、第一の能天使《ファースト・エクスシア》面白いよな」
「そうやんな、あの暗黒結社を魔の咆哮で一撃したのは、さすがに感動したわ」
「なあ、おまえらさあ」

二人はTのほうに振り返った。

「さっきから、なんの話だよ」
「何って、第一の能天使《ファースト・エクスシア》だよ。知ってるだろ」
「知らねーよ」
「時代遅れやな、T。流行に乗らへんと、原始人なってまうで」
「うるせーな。早く教えろよ」
「ううむ。教えられるのなら教えるが、かなり奥深くてな、一言で説明できないんだわ」
「確かに、説明すんの難しいからな。ネットで調べた方が早いんちゃう」
「おいおい、面倒くさがるなよ」
「後で調べてみ」

そう言うと、二人はトレイを持って席を立った。詳しく教えてくれない二人に、Tはイラッときたが、講義の時間が迫っているのもまた事実だった。仕方なく、Tも食後のトレイを持って、二人の後を追った。

講義中、Tはスマートフォンを使って、第一の能天使《ファースト・エクスシア》というものについて調べていたが、そんなものは見つからなかった。出てくるのは、天使の階級とか、あまり関係なさそうなものだ。

もしかしたら、二人がオレのことをだまそうとしたのかもしれない。そう考えると、Tは一気に馬鹿馬鹿しくなって、手に持っていたスマートフォンを机に投げた。

「おい、調べた時間返せよ」

講義が終わった帰り道、Tは二人に言った。

「なんのことや、いきなり」
「あの、ファーストなんとかってやつ、全然見つからなかったぞ。二人がグルになって、オレをからかったんだな」
「いやいや、そんなはずはない。ちゃんと探したのか。本来なら、探さなくても知っているものだが」
「ほんまや、あらへん。なんでや」

二人のうち片方がTの携帯で探したが、例のものは見つからなかった。

「だろ」
「わいの携帯も、情報が消えとる。ええ。今週末楽しみやったのに」
「なんだって。それは、まずい」

二人は、それぞれのスマートフォンを手に持って、一生懸命に目を通した。そして、画面を見ながらTに言った。

「すまん、ちょっとオレ帰るわ」
「わいも。またな」
「え、おい」

そういうと、二人は早足で離れていった。よほど気になるものらしいな第一の能天使《ファースト・エクスシア》ってものは。オレも少し、見てみたいかも。

しかしその後、TはWEBサイトを探し回ったが、それは見つかることはなかった。

そしていつしか、Tの友達二人は、Tが講義室にやってくるまでは「例のアニメみたいなもの」で盛り上がり、Tが来た後は、他の話題で盛り上がるようになった。特に仲が悪くなったわけでもないが、Tは二人に気を使われたくなかった。そしてそのためには、それについてどうしても知る必要があった。

Tは友人や家族など、周りの人を始め、書店に行ったり、再度ネットで調べたりした。その結果分かったことは、なぜか小さい世代はみんな知っていて、親世代は全く知らないこと。そして、Tの世代がちょうど、その分かれ目だということだった。

考えれば考えるほど、分からなくなる謎の現象だった。そして時間がたつにつれ、いつの間にかTは探すことを諦めていた。そして、その第一の能天使《ファースト・エクスシア》というのは、そういう謎のものなのだと、全てを受け入れたのだった。

一方、地球を囲む宇宙の中に、ポツンと浮かぶ小さな宇宙船があった。宇宙船からは、大きなアンテナが飛び出していて、地球の方向に向けられていた。

「おい、地球人の洗脳は順調か」
「まあまあと言ったところです。一部洗脳されていない地球人もいますが、あらかた受け入れているようです」
「よし、我々がこの惑星に降り立つ日も近いようだ」
「それにしても、あれを我々の名前にしてよかったのでしょうか。もっと考えるべきでは」
「安心しろ。これは、ある地球人が書いた物語の中で最強の存在だからな。ちなみに、そいつはかなり若く、地球語で『中学二年生』と呼ぶそうだ」

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ぱっちー
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