実話を元にしたハートフルストーリー『最強のふたり』(原題:Intouchables)。今回は、そのあらすじ紹介と解説をしたいと思います。出会うはずのなかった二人が起こした奇跡とは? 感動したい方必見の作品です。
公開年 | 2011年 |
受賞歴 | 東京国際映画祭東京サクラグランプリ セザール主演男優賞 東京アカデミー賞最優秀外国作品賞 |
上映時間 | 1時間52分 |
ジャンル | フランス映画、コメディ |
主演 | フランソワ・クリュゼ、オマール・シー |
監督 | オリヴィエ・ナカシュ、エリック・トレダノ |
配信中の サービス |
Netflix, dTV, Hulu, U-NEXT, Amazon |
あらすじ
全身マヒの大富豪フィリップは自身の世話役を募り、数多くの候補者の中から、スラム街出身のアフリカ系青年ドリスを雇います。
荒削りで楽天的なドリスの雑な介護に、頭を抱えるフィリップ。
しかし一方で、その選択に後悔はないのです。なぜなら、ドリスは他と違って自身を対等に扱うから。
普通に生きていれば出会うはずのない二人は、互いにぶつかり合いながらも、次第に男同士の友情を築いていきます。
ユーモアもありながら、麻薬取引や障害者倫理などの社会問題にも、深く切り込んでいる秀逸な作品です。
※動画の配信情報は2021年9月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトでご確認ください。
感動ポイント解説(ネタバレ)
それでは、『最強のふたり』について、詳しく解説していきましょう。上図は本作品の流れと、観た時の感情推移を表しています。
それぞれのポイントについて、説明していきます。
ここからは、ネタバレが含まれますので、一度作品をご覧になることをお勧めします。
パートナー
本作品はまず、男性二人が車を暴走させるシーンから始まります。しかし、BGMが悲壮感に満ちていて、ヤンチャしているわけではなさそうです。
どうして、車を暴走させるに至ったのか?
そうなるまでの長い道のりが、これから語られることになります。
二人が初めて出会ったのは、フィリップの介護を募る面接のときでした。
黒人男性のドリスは、不採用のサインが欲しくてやってきました。最初から介護がしたいわけではなく、失業手当でお金をもらおうとしていたのです。
しかし、すぐにはサインをもらえず、一時帰宅するドリス。それも束の間、母から日頃の手癖の悪さ、自堕落さを非難され、家から追い出されることに。
仕方なく昔からのダチと駄弁るも、面白くもなんともなく、漠然ともやもやしてつまらない。そういった感じでした。
そんな中、翌日を迎え、不採用のサインをもらいにいくドリス。しかし、不採用という割に、敷地の案内をされるという不自然さに、戸惑いを隠せません。そして、フィリップが彼にこう言います。
「君に1か月の試用期間を与えたい」
居場所がなくなったドリスの、唯一の救い、生涯の親友が生まれるきっかけでした。
いらないよ、情けなど
そこから、ドリスとフィリップの介護生活が始まりました。
説明中に寝たり、体を雑に動かしたり、足のクリームで頭を洗ったり、雑な介護をするドリスに、フィリップも半ば呆れた様子。
さらには、ドリスのカバンから警棒やナイフなど物騒なものまで出てきて、健常者と障害者の差別をほのめかすジョークまで。本当に大丈夫なのかという不安を誘います。
しかし、フィリップはドリスのことを、決して見捨てたりしませんでした。
フィリップの友人が、彼を心配して、ドリスみたいな連中は情け容赦がないから気をつけろと忠告するのに対して、こう返します。
「そういうところがいいんだ。いらないよ、情けなど」
ややセンシティブな話ですが、障害者にとって酷なのは障害ではなく、周りから腫れ物に触るように扱われることという話を聞いたことがあります。
しかし、健常者と障害者、分け隔てなく接するというのは、おそらく分かっていても難しいことでしょう。
それを、なんなくやってのけるのが、ドリスなんです。フィリップが彼を選んだ理由なんです。
どうして、こんなに雑な扱いされても怒らずにいられるのか。その理由が分かって、はっとしたシーンでした。
踏み出す一歩
少しずつ慣れてきた介護生活でしたが、フィリップが突然発作を起こします。
それを焦らずに落ち着かせるドリス。人としての慈愛が根っこにあるんですね。二人は夜の散歩に出かけ、その発作は治ります。
そして、フィリップは自身の過去について話します。妻が不治の病で亡くなったこと、趣味のパラグライダーで全身麻痺になったこと。
印象的だったのは、妻を思い出して泣きそうになっているのを、ドリスに悟られないように、彼がこちらを見た時だけ笑顔になるフィリップでした。
そして、互いが信頼する仲になると、それぞれがそれぞれの問題に向き合うようになります。
ドリスは仲違いした家族の問題。フィリップは半年間進展していない文通の問題。
怖くて、逃げ続けた問題でも、勇気を出して、一歩を踏み出すことで、解決の兆しが見え始めるのです。
はまらない日常
すっかり介護生活にも慣れたドリス。フィリップのサプライズ誕生会で、お互いが好む音楽について話し合い、その友情はさらに深まります。
そして、フィリップの文通相手との初めてのデートで、本作品の最高潮を迎えます。
しかし、そううまくはいかないものです。フィリップのデートは、彼女が待ち合わせに来ることなく終わってしまいます。
その後も、パラグライダーという気晴らしはあったものの、ドリスの家族問題が発展し、ついに二人は別々の道を歩むことに。
ドリスはその荒っぽい性格が改善し、うまくいこうとしていましたが、フィリップの方が、他の介護者と馬が合わず、その失意に項垂れます。
そして、ドリスが戻ってきて、フィリップを外に連れ出すものの、そのやるせなさで車を暴走させます。
ここが冒頭のシーンとつながるというわけです。
最高のおもてなし
フィリップを穏やかな海辺に案内するドリス。彼の髭を剃り、おしゃれなランチの席へと移動させ、自身は退室。外から見守ります。
フィリップは、ドリスが何を考えているのかわからず、困惑します。
そして、そこに現れたひとりの女性。デートに来なかった、フィリップの文通相手でした。驚きを隠せないフィリップ。ドリスはそれを見て安心すると、静かにその場を去っていきます。
乱暴で、荒々しかったドリスの、最後で最高のおもてなしでした。
まとめ
本作品の見どころは、ドリスの成長が伏線によって表現されているところです。
フィリップから盗んだ「ファベルジェの卵」を返したり、これまで無縁だった「実用的」という言葉を使ったり、くだらないと思っていた「絵画」の才能に目覚めたり……。
例えば、「ファベルジェの卵」について、もう少し詳しく見るとこのようになります。
- 暴走(面接):棚の上に色とりどりの卵が飾られているのを見かけるドリス
- 家族との別離:母に卵を見せるドリス。宝石のような卵を盗んできた。
- いらないよ、情けなど:フィリップの友人「(ドリスは)宝石強盗で半年服役した」
- 発作:ドリスに対し、信頼してもいいかと尋ねるフィリップ。そして、妻がくれた大事なファベルジェの卵を返してくれと言う。しかし、ドリスは卵をあげた母と仲違いをしたので、家に帰りづらい。
- 最高のおもてなし:フィリップに卵を返すドリス。家族と無事仲直りできたことを暗に示している。
最初、ドリスに教養や世話を教えていたのはフィリップでしたが、それが物語終盤となると、ドリスがフィリップを助けるようになるというのもポイントで、特にラストシーンを見ると「ドリス、大人になったな〜」と感慨にふけってしまうのです。
笑いと泣き。
この二つを同時に経験したい方は、本作品がお勧めです。
※動画の配信情報は2021年9月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトでご確認ください。